イワガラミ

岩絡み アジサイ科イワガラミ属 落葉つる性木本 花期:5〜7月
2007/05/26 広島県滝山峡で撮影
2007/05/26 広島県滝山峡で撮影
本州・四国・九州、朝鮮に分布する木本性の落葉ツル植物。主にブナ林などの夏緑広葉樹林の樹幹や岩などに這い登って生育する。
茎は多数の気根を出して樹木などに付着し、特に渓畔林や林縁、倒木によって形成されたギャップなどでは幹を登って高木層に達するほどに生長する。
葉は対生し、長さ5〜12cmであるが、大きさは変異に富んでいる。縁には荒い、やや不規則な鋸歯がある。表面は主脈腋に毛があり、裏面は緑白色で主脈および脈腋に毛がある。葉柄は葉身とほぼ同長で長い。
花は5月から7月にかけて咲き、枝先に花序を形成する。中心部には小型の両性花がたくさんあり、周辺には1枚の白色の萼からなる装飾花がある。両性花のつぼみは、5枚の花弁が合わさっていて、帽子のようである。花が開くと同時に、この花弁は開くことなく脱落し、雄しべと雌しべが現れてくる。雄しべの花糸は長さ4.5〜6mmで、つぼみの中で折りたたまれていたのであろうか、二つ折れになっている。装飾花の花弁状のものは萼で、基部に退化した花の痕跡がある。装飾花を持つ植物では、実を稔らせる両性花の花弁は痕跡的に退化しているものが多い。装飾花は種子を作らず、長期にわたって訪花昆虫の目印となる。イワガラミの両性花は、花弁をつぼみの保護材としてのみ使用し、雄しべと雌しべのみの必要最低限の姿となって資源を節約している。

生態的にも形態的にもよく似た種にツルアジサイ(ゴトウヅル)がある。ツルアジサイは装飾花の蕚片が4個なので、花が咲いていれば間違うことはないはずであるが、高木に登ったものでは双眼鏡がなければ判別しにくく、葉の形もよく似ている。典型的な葉では区別が容易であるが、林床の地面を這っていたり岩に付着しているものでは区別に困ってしまうことも多い。